話題別英単語リンガメタリカ改訂版(Z会出版)

「アメージング・グレース」物語(彩流社)

2007年は、英国国会が奴隷貿易の廃止を決議してちょうど200年目にあたる。その奴隷貿易廃止に向けて果敢に運動を行なったのが英国国会下院議員であったウィリアム・ウィルバーフォース。そして、その彼を精神面で支援したのが自ら奴隷貿易に手を染めていたジョン・ニュートンである。ジョン・ニュートンは実は日本でよく知られている名曲「アメージング・グレース」の作詞者である。

彼は、悪辣な生活を送った後、キリスト教に回心し、英国国教会の牧師へと 180度の転身を遂げた人物で、今でも歌われている多くの讃美歌を作詞した。この本は、彼が友人の牧師に書き送った書簡形式の自伝部分と奴隷廃止運動に大きな影響与えた彼の論文、そして訳者の解説部分からなりたつ。「アメージング・グレース」の由来、奴隷貿易に関する西洋史、宗教上の回心とはどういうものかに興味のある人なら一読しておきたい本である。

なお、現在英国では、奴隷貿易廃止運動に身を投じたウィリアム・ウィルバーフォースを主人公とした『アメージング・グレース』という映画が一般公開されているが、残念なことに日本では公開に至っていない。

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【書 評】

週刊 『クリスチャン新聞』 2007年4月15日  評・大塚野百合=恵泉女学園大学名誉教授

あの名曲「アメイジング・グレイス」を、本格的に日本に紹介する本が出ました。『「アメージング・グレース」物語ゴスペルに秘められた元奴隷商人の自伝』(彩流社)です。これは、この歌の作詞者であるジョン・ニュートンの自伝、彼が書いた「その後のジョン・ニュートン」を中澤幸夫氏が訳したものですが、巻頭に訳者による解説が載せられています。氏は、この名曲の価値を、文化史的見地から詳しく述べています。

わたしは、 『賛美歌・聖歌ものがたり』(創元社、1995年)に、この名曲についての記事を書きましたが、その際には、参考にできる日本語の本はいのちのことば社が出版したニュートンの自伝しかなく、あとは、英文の彼についての伝記だけでした。それですから、この新刊書を読んで、私は多くのことを教えられて、感謝しています。

子どもが無かった彼ら夫婦が、彼の姪のエリザを愛していたのに、14歳8か月で天に召されたこと、妻は10年の間病に苦しみ、がんで召されたことを知りました。その後、彼と妻が愛していたもう一人の姪のエリザベスが、彼の世話をしていたのに、彼女は神経の不調に見舞われて、彼と別れ、老齢の彼は、苦しみに潰されそうになったというのです。

「その後のジョン・ニュートン」を読んで、私のニュートン像は、新しい奥行きをもつようになりました。妻に対して、世の常ならぬ深い愛を抱いていた事は知っていましたが、2人の姪にも細やかな愛情を注ぎ、その一人の死と、もう一人の心の病を嘆き悲しんだことを知ると、彼が書いた多くの賛美歌の言葉が、私の霊魂(たましい)に彼のハートの鼓動を伝えてくれます。

彼は、「アメイジング・グレイス」 に神の恵みと愛を歌いましたが、その歌は、このような温かいハートから湧き出たのです。


マヘリア・ジャクソン自伝(彩流社)

マヘリア・ジャクソン自伝(彩流社)

公民権運動に力を尽くしたキング牧師は「私は、私の4人の子供たちがいつか皮膚の色でなく、人格によって判断されるような国家に暮らすことを夢見ている」という有名な演説を行なっているが、その演説を行なった会場でゴスペルソングを朗々たる声で歌ったのがマヘリア・ジャクソンである。

原著は、マヘリアが貧困と差別と闘い、「ゴスペルの女王」としての地位を不動のものにするまでを描いているが、その後彼女が亡くなるまでは訳者が補遺として加筆している。黎明期のゴスペルソングの状況や、公民権運動が盛んであった当時の激動するアメリカを活写した本である。自伝にありがちな平板な記述ではなく、劇的な構成になっているので、読み物としても第一級である。

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